『ただ只管に光を求めて――オーク砦の救出戦』
そこはアドロードに本部を構える、小さな聖堂騎士団の詰め所。
目抜き通りの横手、上流階級の邸宅の並ぶ区画の中でも舗装の終わっていない最も寂しげな位置に館を構え、門からは大小様々な馬車、騎兵、武装した警備兵があわただしく行きかっている。
貴方達は冒険者ギルドの紹介で騎士団の館へと訪れた。
人通りの多さに戸惑っていると、あるいは見知った老騎士が姿勢よくこちらへ歩み寄ってくる。
「よく来てくれたな、諸君。――心より歓迎申し上げる。」
鍔の広い帽子を手に丁寧なお辞儀をする老人の名はエーミル・フォン・ハイゼ。しばしば冒険者ギルドの依頼を共にする騎士である。
彼の案内で騎士団の館へ足を踏み入れれば、広いながらも装飾の殆ど感じられない質素な造りの廊下が続いてく。道すがらすれ違う騎士達に丁寧すぎる会釈を受けながら、貴方達は小さな会議室のひとつに通された。
部屋の真ん中を円卓が占領し、人数分のお茶とサンドイッチの軽食が置かれ、給仕が部屋の隅に控える中でハイゼは貴方達に座るよう丁寧に促した。
「さて、早速だが君たちに参上頂いたのは他でもない。行く手に君たちの腕を必要とする困難が待ち受けているからだ。」
そういって会議室の壁に大きな地図を広げた。アドロード近郊の地図らしい。
「アドロードより南方に7日程の位置。この周辺は山岳地帯で纏まった都市がなく小集落群が点在している、いわば辺境だ。」
トン、古びた紙の地図の一点を指した。
「この周辺の村で略奪が多発している。…山岳地帯だ、オークの襲撃などは珍しいことではない。――だが、あまりにも周到にして苛烈すぎる。被害の規模からして組織的攻撃、つまり統率者が居ると考えられている。」
「それが何者の仕業であるのか、実はまだよく分かっていないのだ。恐らくはオークなどの亜人種の他に、"訓練された”人間の兵士が居るということ以外にはな……。我らも僅かに生き残った村人の要請を受けて斥候を出したが、その悉くが騎手を失って軍馬のみ帰参する始末。軍勢を出そうにも、確度ある情報が無ければ軍は出せぬとの上層部の見解だ…、……
何が為の騎士団かッ!」
「…失礼。だが、村人達の情報によると……少なくない女子供が囚われているらしい。老人や病人は殺し、健康な男子や見目のいい女子供を優先して浚う手口から、おそらく奴らは人身売買を収益源の一つにしているのだ。――…ならばまだ、幾人かは生きていよう。」
「これは私個人からの依頼だ。危険度に比して報酬はさほど多くは出せないだろう。だが、騎士団を頼れぬ以上は諸君ら冒険者の他に頼る者は居ない…。それも、奴らの懐柔に乗ったり、臆病風から逃げたりしないと確信できる人間でなければならない。」
「私には、それは諸君らと他の数名しか思い当たらない。――…よろしく頼む。」
RP描写や詳細情報はまた追加、編集してきます。
この後おじいさんは上層部にバレないように内部工作、既に売り払われたであろう人々の買戻し、情報集めに専念するそうです。その辺の描写も居住区でやろうかなぁ…。
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