はるか西方の人間の国。草原と山々と灰色の空の連なる王国。
古より悪しき勢力を防ぎ、英知と文明の防壁は黒鉄の斧を前に崩れ、賢王はオルトランドの冥山の火に焼かれた。もはや民と悪魔の間を遮るものはなく、あらゆる暖かい物は廃れ、人々の心は暗く、冷たい闇の中に放り込まれた。
幾百年、悪しき軍勢から民を守った軍勢は敗れた。王は黄昏の野へと去り、老翁の助言は黒の軍勢を前に空しく掻き消える。
日々敗走を続ける軍勢、野は焼かれ、畑は枯れ、家々は打ち壊された。
民は戦火を逃れて列を成し、やがて逃げた先の王都も万の軍勢に包囲され廃墟となる。
絶望的な戦いの最中の王と人々に手を差し伸べる国はなし。
孤立無援の絶望的な戦いの中で多くの民が犠牲となった。
やがて彼らは国境のルーインの大河へ差し掛かる。
それは対岸が見えぬほどの大河、大陸と大陸を隔てる果てしない境界。
境界を渡ることは国を、大陸を捨てるということ…。
一隻、また一隻と人々は国を捨てて逃げていく。
親衛隊は最後の義務を果たすべく、港町…大陸最後の町である、“城塞都市レーヴァディン”に立てこもり、長い逃避行の末疲れきった民、船を待つ民の時間を稼ぐべく最後まで奮戦したのである。
程なく城壁は破られ、町は廃墟と化した。
それでも、国中から未だ人々は逃れてくる。
最後の船が出るそのときまで――町は難民を迎え入れる機能を必死で維持し続けた。
かの国の奮戦と悲劇は帝国にまで広がった。
さりとて議会は彼方遠方の利のない戦に興味なく。
人々は吟遊詩人の歌を聞きながら、ルーインの流れの向こうの悲運にただ涙した。
やがてその中で一人の貴族が立ち上がり――
彼を中心に魔術師ギルド、弱小騎士団の数々、傭兵団――そして冒険者ギルドへと呼び声がかけられた。
彼らのすべてが呼応したわけでもなければ、組織として参戦を表明したものはない。…つまりそれほど状況は絶望的であった。それでもそこにロマンがある限り、呼応する声は決してなくならない。
所属もバラバラな有志達が集う本部が、アドロードに拠点を持つとある聖堂騎士団の館に置かれた。
その決して広くない会議室に、騎士、傭兵、果ては町の衛士などの剣持つ者。物資と計算に長けた商人たち、世界の理を操る魔術師達、医者、聖職者、職人、道化師…あらゆる仕事と身分を持つ者たちが一同に介したのである。
彼らは絶望的な状況を打開すべく、それぞれの得意分野での協力を約した。
商人達が現地までの船と物資を用意、行程を計算し。
魔術師が気候を操り、道中の旅を安らかなものにする。
騎士、兵士らは身分の貴賎問わず軍勢を組織し、現地での“救出”の時間を捻出する。
そして冒険者には廃墟の町に取り残された人々の“救出”が託されるのだった。
ながい!(笑)
とはいえ概要は最初にあったとおり廃墟の町でのリアルタイム救出セッションです。
前置きが長い割には比較的単純になる…予定orz
PR