灯台に詰める観測将校は部下の悲鳴を受けて海を眺めた。かなたに見える漆黒の帆と竜頭。
慌てて双眼鏡を手に所属を確認、「…至急、司令部に伝令!――グロース艦隊、アイルベ河を上りつつあり!」
駆ける早馬、打ち鳴らされる教会の鐘。
逃げ惑う市民。阿鼻叫喚の喧騒の中を忙しく騎馬将校が書けまわり、兵が隊伍を組んで持ち場についていく。
アノンフィル軍は至急入り江の封鎖にかかる。しかし実は艦隊は陽動で…。
昨晩のうちにグロース艦隊から揚陸艇で出撃したグロース海兵隊は既に街に程近い森に潜伏。
市民が息を潜めて避難している街を襲撃せんと、黒光りする大剣を研いでいるのであった。
一方、街に残る戦力はわずかな守備兵――それも老人や新兵などの2級線部隊。
そしてルシアンら幼年学校の学生のみだった…。
わはー…絶望的だ!だがそれがイィ!
いつもの退屈な授業風景。しかもより退屈な座学とあってルシアンは半分船を漕いでいた。
優等生のロブなどは、教授の2回も3回も繰り返す同じ言葉に辛抱強く相槌を打っているが、ルシアンは早々に耳に仕事を放棄させて、眠そうな目で彼方の海を眺めていたのである。
(…何、あれ……。)
しかし煌く海の向こうに、小さな黒点が見える。
教授の退屈な授業をバックミュージックにそれを眺めていると、次第に黒点が大きくなって、輪郭もはっきりしてきて…。
「先生! 発言をしてもよろしいでしょうか。」
おぉ、質問かね。とばかりに顔をほころばせる老教授。
しかし彼の顔はその数秒後に青ざめて引きつることになる。
全員に教室待機を命じて職員室へ飛び出す教授。
残された生徒たちは窓に群がり、ザワザワと会話に興じるが。
ロブJとルシアンは二人、窓から離れた位置で互いの見解を語る。
ルシアンが艦隊の動きの不審を挙げれば、それをロブJが明晰な頭脳で論立ていき。
二人の結論が出る、その同じタイミングに生徒の悲鳴が上がった。
「グ、グロース軍だ! 南門が燃えてるぞ!」
生徒たちは一様にうろたえ、ある者は逃げ出して、ある者は打って出る事を主張する。
家族を心配して、半狂乱で駆けていく者たち。教室に残った人間は半分にも満たない。
室内に広がる不安。喧騒。それを打ち消したのはやはりロブJだった。
「諸君静粛に!」
「今襲われているのは――この町だ。そう、人々が暮らすこの街なのだ。 僕たちは――軍人だ。 半人前の卵だが、それでも僕たちにできることを考えよう。」
張りのある少年の声。信任厚いロブJの声に皆が一様にうなずく。
ロブJを中心に作戦を立てていく。まずは武器庫の開放、武装。そしてチリジリに散った級友と、市民を守ろうという方針。
本来ならばどこか拠点に篭城して守備隊が帰還するのを待つべきだが、武器持つ者が少ない以上。彼らに選択肢は一つしかなかった。
ルシアンが渋る教授から武器庫の鍵を"紳士的に”強奪して。
ロブJの指示で皆が武装すれば、それぞれ分隊を組み。
急ごしらえで作った座標マップを頼りに分担を決めて。合流時間と場所を指定。
一部の分隊が拠点を構築する他は、煙立ち上る…今や死地となった街へ駆けていく。
少年たちの顔には不安の色があった。けれどそれ以上に目が輝いていたのは使命感や誇りといった青い感情だっただろう。
しかしその青さが少なからぬ市民の命を救うことになるのである――その若い彼らの少なからぬ命と引き換えに。
……シナリオってこういうものだったかしら(汗
いっそ本文でよくない…?orz
ともあれ、燃えてきましたよ。教習車を破壊する作業が終わったら続きを書くぞー!
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